新生児マススクリーニング
新生児マススクリーニングは生後4~6日目のすべての赤ちゃんを対象にした検査です。見かけは元気な赤ちゃんであっても、生まれつき病気を持っていることがあります。病気の中には、早く見つけて治療することにより、障がいの発生を防ぐことのできるものがあります。新生児マススクリーニングは、そのような病気を発症する前に見つけて、すぐに効果的な治療を始めるための大切な検査です。
令和7年度(2025年度)より、新生児マススクリーニングの検査業務を外部委託しました。関係医療機関宛てに、以下の通知を発出しました。
新生児マススクリーニングの流れ
札幌市内の医療機関で出生されたお子さまの新生児マススクリーニングは、以下の流れで行われています。
新生児マススクリーニングの流れ
流れ
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説明
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採血
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- 検査のための採血は、生後4-6日に産科医療機関で行われます。(生まれた日を0日と数え、その翌日が「生後1日」になります)。
- 血液は、かかとから採取します。
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検体の郵送
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医療機関で採血された血液検体(ろ紙に染み込ませたもの)は、検査機関に郵送されます。
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検査
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- 検査機関は検査を行い、疾患の疑いについて判定します。
- 検査機関に血液検体が到着後、1週間程度で検査結果が判明します。
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検査結果の通知
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- 1週間に1度、検査機関から医療機関へ検査結果をお送りしています。
- 医療機関から、保護者の方へ検査結果をお渡しします。
- 検査の結果、異常が認められなかった場合は、1か月健診時に検査結果をお渡しします。
- 再採血(もう一度採血して再検査)や精密検査(専門の医療機関の受診)が必要な場合、検査結果判明後、すぐに連絡いたします。
- 赤ちゃんの100人に1人くらいは、一時的な検査値の異常で再採血が必要になる場合があります。
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<必要な場合>
精密検査を受診
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- 精密検査が必要な場合、専門の医療機関を受診していただきます。
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新生児マススクリーニングの対象となる病気
札幌市の新生児マススクリーニングでは、以下の26種類の病気の検査を行っています。
内分泌疾患
ホルモンの分泌異常によって起こる病気です。飲み薬でホルモンを補うことなどにより治療します。
内分泌疾患(2疾患)
病気の名称 |
病気の説明 |
先天性甲状腺機能低下症
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- 胎児期からの甲状腺の異常によって、神経の発達や新陳代謝をつかさどる甲状腺ホルモンが正常に分泌されないために発症します。
- 早期にホルモン補充などの適切な治療を開始しないと、回復が難しい身体や知能の発達障がいが残ります。
- 頻度はおよそ3,000人に1人です。
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先天性副腎過形成症
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- 副腎皮質ホルモンを作る酵素の異常から、糖や塩分の代謝と性分化に必要なホルモンの分泌障害により発症します。
- 早期にホルモン補充などの治療を開始しないと、発育不良や女児では外性器の男性化が見られ、重症な場合には脱水などで死亡することもあります。
- 頻度はおよそ15,000人に1人です。
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代謝異常症
アミノ酸や糖の代謝の異常、エネルギーを作る過程の障がい等によって起こる病気です。特殊なミルクや食事療法、飲み薬、生活指導などにより治療します。
アミノ酸代謝異常症
アミノ酸はタンパク質のもととなる成分です。ある特定のアミノ酸の利用や分解がうまくできずに体内にたまってしまい、精神発達の遅れや重度の体調不良を引き起こします。特定のアミノ酸を除去した特殊ミルクやタンパク制限食といった食事療法を行います。
アミノ酸代謝異常症(6疾患)
病気の名称 |
病気の説明 |
フェニルケトン尿症 |
- アミノ酸の一つであるフェニルアラニンをチロシンに変換する酵素の欠損により発症する病気です。
- フェニルアラニンを制限した特殊なミルクや食品を用いたりすることで治療します。
- 早期から治療することで、精神発達が遅れたり、けいれん、皮膚や毛髪の色素欠乏などの症状を未然に防止します。
- 頻度はおよそ6万人に1人です。
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メープルシロップ尿症
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- 分岐鎖アミノ酸のロイシン、バリン、イソロイシンから生成されるα-ケト酸の脱炭酸反応を行う酵素の欠損により発症する病気です。
- 早期に特殊ミルクなどの食事療法をベースとした治療を開始しないと、重症の場合、意識障害やけいれんなどを起こして死亡することもあります。
- きわめて稀な病気です。
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ホモシスチン尿症
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- アミノ酸の一つであるメチオニンの代謝産物であるホモシスチンを変換する酵素の欠損によって発症する病気です。
- 知的障がいや骨格異常、水晶体亜脱臼などが見られ、血栓症で死亡することもあります。
- きわめて稀な病気です。
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シトルリン血症
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- 体内の余剰窒素を排出するための尿素サイクルに関連する酵素、アルギニノコハク酸合成酵素が欠損しているために、高アンモニア血症を引き起こす疾患です。
- 血中シトルリンが高値となります。
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アルギニノコハク酸尿症 |
- 体内の余剰窒素を排出するための尿素サイクルに関連する酵素、アルギニノコハク酸リアーゼの欠損により高アンモニア血症を引き起こす疾患です。
- 血中アルギニノコハク酸やシトルリンが高値となります。
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シトリン欠損症 |
- シトリンと呼ばれるタンパク質が欠損しているために、新生児期から乳児期にかけて胆汁うっ滞や肝障害を引き起こす疾患です。
- 血中シトルリンやメチオニン、ガラクトースなどが高値となります。
- 思春期以降に高アンモニア血症や意識障害などが現れることがあります。
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有機酸代謝異常症
有機酸とはアミノ酸が体内で変化してできる物質の総称です。特定の有機酸の代謝がうまくできずに体内に溜り、哺乳不良や嘔吐、けいれんなどを引き起こします。特定のアミノ酸を除去した特殊ミルクやタンパク制限食といった食事療法を行います。
有機酸代謝異常症(9疾患)
病気の名称 |
病気の説明 |
メチルマロン酸血症 |
- アミノ酸が代謝を受ける過程で働くメチルマロニル-CoAムターゼと呼ばれる酵素が欠損しているために、体内にメチルマロン酸が蓄積し、代謝性アシドーシスや高アンモニア血症を引き起こす疾患です。
- タンパク制限などを行い、発作を起こさないようにコントロールすることが重要です。
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プロピオン酸血症 |
- アミノ酸が代謝を受ける過程で働くプロピオニル-CoAカルボキシラーゼと呼ばれる酵素が欠損しているために、体内にプロピオン酸が蓄積し、代謝性アシドーシスや高アンモニア血症を引き起こす疾患です。
- タンパク制限などを行い、発作を起こさないようにコントロールすることが重要です。
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イソ吉草酸血症 |
- ロイシンが代謝を受ける過程で働くイソバレリル-CoA脱水素酵素の異常によって、体内にイソ吉草酸が蓄積し、代謝性アシドーシスや高アンモニア血症が引き起こされる病気です。
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メチルクロトニルグリシン尿症 |
- ロイシンが代謝を受ける過程で働く3-メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼが欠損しているために起こる病気です。
- 無症状のまま経過する方もいます。
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3-ヒドロキシ3-メチルグルタル酸(HMG)尿症 |
- ロイシンが代謝を受ける過程で働く3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAリアーゼが欠損しているために、飢餓時などにケトン体を産生できずに低血糖発作を引き起こす病気です。
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マルチプルカルボキシラーゼ欠損症 |
- ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損またはビオチニダーゼ欠損により引き起こされる病気です。
- ケトアシドーシスや高アンモニア血症がみられます。
- ビオチンの大量投与により治療されます。
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グルタル酸尿症1型 |
- リジンなどのアミノ酸が代謝を受ける過程で働くグルタリル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、異常代謝産物のグルタル酸などが体内に蓄積し、筋緊張低下、けいれんなどを引き起こす病気です。
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β-ケトチオラーゼ欠損症 |
- アミノ酸が代謝を受ける過程で働く酵素、β-ケトチオラーゼが欠損しているために、感染時などにケトーシス発作を引き起こす病気です。
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メチルグルタコン酸尿症 |
- ロイシンの異化過程の代謝産物である3-メチルグルタコン酸と3-メチルグルタル酸が尿中に多量に排泄される病気で、複数の原因で起こります。
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脂肪酸代謝異常症
空腹時や運動時など、食事からのエネルギーが足りなくなると、体内の脂肪を分解してエネルギーが作り出されます。この過程がうまく働かないためエネルギー不足となり、重度の体調不良を引き起こします。飢餓状態に陥らないよう食事の間隔を短くすることで低血糖発作を起こさないようにします。
脂肪酸代謝異常症(8疾患)
病気の名称 |
病気の説明 |
中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症 |
- 中鎖脂肪酸からエネルギーを作り出す過程で働く中鎖アシル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、飢餓状態で低血糖発作を引き起こす病気です。
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極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症 |
- 極長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出す過程で働く極長鎖アシル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、飢餓状態で低血糖発作を引き起こす病気です。
- 心筋や骨格筋などに症状が現れることがあります。
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長鎖-3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(LCHAD)欠損症 |
- 長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出す過程で働く長鎖-3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、飢餓状態で低血糖発作を引き起こす病気です。
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カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1)欠損症 |
- カル二チンパルミトイルトランスフェラーゼ1という、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込むための酵素が欠損しているために、長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出すことができない病気です。
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カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2)欠損症 |
- カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2という、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込むための酵素が欠損しているために、長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出すことができない病気です。
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カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ欠損症 |
- カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼという、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込むための酵素が欠損しているために、長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出すことができない病気です。
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カルニチントランスポータ異常症 |
- カルニチン輸送タンパクの異常により細胞内でカルニチンが欠乏しすることにより、長鎖脂肪酸がミトコンドリア内でβ酸化を受けることができなくなる病気です。
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グルタル酸尿症2型 |
- ミトコンドリアの電子伝達フラビン蛋白(ETF)またはETF脱水素酵素の異常により複数の脱水素酵素が同時に障害される病気で、有機酸代謝異常症と脂肪酸代謝異常症の両方の症状が起こります。
- 新生児期に発症する重症型では、治療が難しい場合もあります。
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糖代謝異常症
糖代謝異常症(1疾患)
病気の名称 |
病気の説明 |
ガラクトース血症
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- ガラクトースやガラクトース-1-リン酸の代謝をつかさどる酵素の障害により発症します。
- 早期に特殊ミルクなどによる食餌療法を開始しないと、白内障や精神運動発達の遅れが現れ、やがて肝硬変などで死亡することがあります。
- 頻度はおよそ30,000人に1人ですが、ただちに治療が必要な重症型はきわめて稀です。
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新生児マススクリーニングに関するQ&A
質問 |
回答 |
Q1.検査はどのように申し込むのですか?
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Q2.検査の費用はいくらですか?
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- 検査料は無料です。
- 採血などに必要な費用は自己負担となります。こちらは医療機関にお問い合わせ下さい。
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Q3.この検査はすべての赤ちゃんが受けるのですか?
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- 強制ではありませんが、検査を受けなかった場合、生まれつきの病気を発見できずに赤ちゃんに障がいが残ることがあります。そのため、全ての赤ちゃんに受けていただくことをお勧めします。
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Q4.実際には、どのような検査を受けるのですか?
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- 生後4~6日目の赤ちゃんのかかとから少量の血液を採取して行う血液検査です。
- 採取された血液はろ紙にしみこませた状態で検査機関に送られます。
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Q5.検査の結果はどのように通知されるのですか?
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- 検査の結果は、検査機関に血液検体が到着後、1週間程度で判明します。
- 再検査や精密検査が必要なときは産科医療機関からすぐに連絡します。
- 検査の結果、異常が認められなかった場合は1か月健診時に医療機関から検査結果をお渡しします。
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Q6.再検査と精密検査は違うのですか?
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- 再検査とは、最初の検査で確実に正常と判定できない場合、念のためもう一度行う検査です。出産した産科医療機関でもう1度採血します。再検査は100人に1人程度の割合で必要となります。
- 精密検査は、初回検査あるいは再検査の結果、疾患の疑いがある場合、札幌市内の専門の医療機関で受けていただく検査です。精密検査は500人に1人くらいの割合で必要になります。
- 精密検査を受けた赤ちゃんが、すべて患者というわけではなく、患者と診断される割合は精密検査となる赤ちゃん3人に1人くらいです。
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Q7.赤ちゃんが病気だった場合、どうなるのですか?
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リンク集
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