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更新日:2025年3月9日

コラム「こんにちは、アシストです」(2025年3月号)

「ふるさと小樽にて思う」~大友調査員~

ある日曜の午後、高校時代からの50年来の友人と小樽の街中を歩いていました。高校生の頃、よく立ち寄った書店やレコード店が消えた街の姿に、私たちの口からは寂しさばかりがこぼれ落ちます。この街の少し寂れた雰囲気がいいという人がたくさんいますが、小樽で青春時代を過ごした私たちはいまだに過去の姿にとらわれているのでしょう。

あの頃、賑わいを見せていたのは、その名にふさわしく「花園銀座街」や「都通り」であり、今、観光客があふれている運河界隈ではありませんでした。

 

当時、運河はヘドロが溜まり異臭を放ち、その機能を十分に果たしているとは言い難いものでした。化学部に所属していた私は、重金属汚染調査のため週1回のペースで運河に通っていましたが、いつも頭痛と吐き気に襲われていたことを覚えています。

そんな運河を埋め立てて道路をつくるという都市計画が決定されていましたが、運河を保存すべきだとの声も広がっていました。運河の埋め立てを是とするか非とするか、市民の間で議論がわき起こり、全国的にも話題を呼びました。

その議論の末、運河の一部は埋め立てられましたが、道路幅の一部が見直されて散策路等が整備され、現在の姿となりました。運河を巡る議論は、小樽が観光都市として再生し、歴史文化を活かしたまちづくりを進めるきっかけとなったといえるでしょう。そして、歴史的建造物などを再生し、まちづくりに活用していく流れは小樽にとどまらず、今、全国各地に拡がっています。

運河の埋め立てを主張した人にも保存を主張した人にも、その根底には、小樽の街を愛し、いつまでもこの街を大切にしていきたいという強い思いがありました。両者の異なる考えの根底に同じ思いがあったこと、そのことがとても重要だったと思います。

 

昨今の世界情勢や日本の社会状況を見ると、問題が多様化・複雑化し、解決が極めて難しい課題が山積しています。だからこそ、考えの違う相手を罵倒し、ねじ伏せることに精力を傾けるのではなく、それぞれの考えの根底にあるものをしっかりと据えて、重なり合う思いや考えを見出しながら、幅広く議論を重ねていくことが大切だと感じています。

そして、そのことが、たとえ時間がかかったとしても、誰もが明るい未来を心に描ける社会を実現していくことにつながっていくのだと思います。

 

確かな思いを根底に据えた多角的な議論は、多くの知恵を集め、発展的な考えを創造し、さらには人々の心のエネルギーを集積し、結果として大きな財産を生み出します。

子どもたち一人一人の人権が守られる社会をどのように実現していくのか、差別や偏見、いじめをなくしていくには何が求められるのか、多くの人々によって深く議論がなされることを願いながら、夕暮れの運河沿いの道を古き友人と歩いていました。

令和7年3月9日

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